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宿泊訓練中によけるミニリンメルト水分摂取について

12歳の男児が夜尿症でデスモプレシン口腔内崩壊錠(ミニリンメルト)を服用している母親からの相談。水中毒や低Na血症を防ぐため、水分摂取の管理が必要だが、学校の宿泊訓練では夜の行事でジュースなどを飲む機会がある。どの程度の水分摂取が可能か?ジュースの摂取を控えることはできないのか?この点について検討した。

1.対象患者背景

年齢:12歳  
性別:男児
夜尿症     

処方薬|医薬品名・用法・用量

ミニリンメルトOD錠240μg 1錠 1日1回 寝る前 30日分

処方薬の評価

夜尿症診療ガイドライン2016においてデスモプレシンの推奨グレードは1Aであり、夜尿症の治療薬として推奨される。また日本においてデスモプレシン口腔内崩壊錠は点鼻薬の臨床試験結果と近似している。重篤な副作用である水中毒や低ナトリウム血症を防ぐために水分摂取の管理が徹底されている。

介入前の治療経過

夜尿症の治療経過は順調で副作用も特に発症していない。母親からの相談で、学校の宿泊訓練において夜の行事のときにジュースなどを飲む機会がある。もし飲んでしまった場合、副作用が起こらないかどうか心配になった。

2.具体的な薬学的介入内容

薬学的介入をすべきと考えた理由|問題点など

思春期で集団行動時における夜尿症は繊細な問題のため治療は継続する必要がある。デスモプレシン投与における重篤な副作用は水中毒や低ナトリウム血症があげられる。
水中毒はデスモプレシン投与前の多量の水分摂取することとの関連が指摘されている。多量の水とはどのくらいの量か?夜間行事のときのジュースの摂取を控えることができないか?薬学的な介入が必要と考えた。

薬学的介入開始後の経過|臨床値推移や指導内容等

ミニリンメルトの問い合わせ窓口に連絡し、摂取可能な水分量を確認した。その結果、就寝前3時間-起床時までは200-240mlの水分なら摂取は可能(ただし一気に摂取はしない)との回答を得た。
母親にその旨を説明し、少量なら水分摂取は可能と説明した。ただし一気には飲用しないように注意した。また担当教員にこの件を連絡し、夜間行事のジュースの摂取を配慮してもらうようにアドバイスした。

薬学的介入後の効果

宿泊訓練は無事終了し、水中毒や低ナトリウム血症などの症状はおこらなかった。

3.この事例に関する考察

処方薬の科学的根拠に基づいた評価

夜尿症は有病率の高い疾患で、社会生活や学校生活にで不具合を生じることがある。抗利尿ホルモンであるバソプレシンの誘導体デスモプレシンは夜尿症診療ガイドライン2016において推奨グレード1Aで夜尿症の治療薬として推奨される。水の再吸収を促進する薬理作用があるため、重篤な副作用である水中毒や低ナトリウム血症には細心の注意を払う必要がある。ミニリンメルトODを服用する場合、就寝前から起床時までは水を飲まないことは周知のことであるが、学校生活においてその原則を守れない可能性がでてくる。精神的に繊細な疾患であるため、服用を中止することも困難である。
今回、水分摂取をせざるを得ないケースにおいて具体的な摂取可能な水分量を提供することで、母親の不安を軽減することができた。また担当教師による配慮により水分摂取を回避できることも可能になった。
【参考文献(添付文書含む)】
  • 夜尿症診療ガイドライン2016
  • ミニリンメルトインタビューフォーム
  • フェリング・ファーマ株式会社 くすり相談室