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マダニによる重症熱性血小板減少症候群(SFTS)について

マダニとは?

マダニは頑丈な外皮で覆われた比較的大型のダニで、主に森林や草地などの屋外で生息しています。ダニの多くは長期間(10日以上の場合もあります)吸血します。マダニの体長は吸血前で約3〜4mm程度であり、吸血後のメスはその3〜4倍にまで膨らみます。一方、家庭内で見られる他の種類のダニは肉眼ではほとんど見えませんが、マダニは肉眼でも確認できる大きさです。

なぜマダニに注意が必要なのか?

病原体を保有するマダニに刺されることで、さまざまな感染症(ダニ媒介感染症)を発症するリスクがあります。主なダニ媒介感染症には、重症熱性血小板減少症候群(SFTS)、ダニ媒介脳炎、日本紅斑熱があります。特にSFTSは致死率が10-30%と命にかかわる感染症です。SFTSはマダニに直接刺されるだけでなく、ペットから飼い主や獣医師に感染することもあります。また、血液や患者体液との接触によって人から人への感染も報告されています。現在、有効な薬やワクチンはなく、発症した場合は対症療法が主な治療方法です。特に高齢者は重症化しやすいと考えられています。

マダニによる感染症を予防するにはどうしたらいい?

マダニに刺されないようにする

草の茂ったマダニの生息する場所に入る場合には、長袖、長ズボンを着用し、サンダルのような肌を露出するようなものは履かないこと。上着や作業着は家の中に持ち込まないようにしましょう。野外活動後はシャワーや入浴で、ダニが付いていないかチェックしましょう。

虫よけを使う

マダニに対する虫よけ剤は2013年に新たに認可されました。現在は、ディートとイカリジンの2種類の有効成分の虫よけが市販されています。しかし、マダニの付着を完全に防ぐわけではありません。様々な防護手段と組み合わせて対策してください。できるだけ高濃度の虫よけを選びましょう。
有効成分分類年齢・使用制限特徴
ディート 5-10%防除用医薬部外品6ヶ月未満には使用しない
6ヶ月−2歳未満 1日1回
2-12歳未満 1日1-3回
服やプラスチックが変色するかもしれない。
ディート 12%第2類医薬品6ヶ月未満には使用しない 6ヶ月−2歳未満 1日1回 2-12歳未満 1日1-3回服やプラスチックが変色するかもしれない。
ディート 30%第2類医薬品12歳未満には使用できない服やプラスチックが変色するかもしれない。
イカリジン 5%防除用医薬部外品年齢制限はとくにない塗り直しが可能
イカリジン 15%防除用医薬部外品年齢制限はとくにない塗り直しが可能
 

ペットからの感染を予防する

野外で動物を飼育している場合、過度な触れ合い(口移しでエサを与えたり、動物を布団に入れて寝たりすることなど)は控えてください。また、動物に触ったら必ず手を洗いましょう。飼育している動物の健康状態の変化に注意し、動物が体調不良の際には、咬まれたり舐められたりしないように細心の注意を払いながら、動物病院で診てもらって下さい。

マダニに刺されたらどうしたらいい?

マダニはヒトや動物の皮膚に取り付いて長時間(数日から、長いものは10日間以上)吸血します。しかし、刺されたことに気づかないこともあります。もし吸血中のマダニに気づいたら、無理に引き抜かないでください。マダニの一部が皮膚に残り、化膿や感染のリスクが生じます。医療機関で処置を受けましょう。医師にマダニに刺されたことを説明し、マダニの除去や洗浄などの適切な処置をしてもらってください。また、刺された後の数週間は体調の変化に注意し、発熱などの症状があれば早めに医療機関を受診してください。

参考資料